バブル期の名作あぶない刑事，今DVDであぶない刑事がよみがえる

あぶない刑事はこうして生まれた！

1986年４月。岡田晋吉、初川則夫をはじめとする日本テレビプロデューサーと、
松田優作主演映画「最も危険な遊戯」などを製作したセントラル・アーツの黒澤満プロデューサーは、
それまでの刑事ものとは一線を画した、いわば日本版「マイアミ・バイス」を目指して、
舘ひろしと柴田恭兵、それに後にフジテレビ系「抱きしめたい！」などの
トレンディードラマでブレイクすることになる浅野温子を主演にした
新番組「刑事ワイルド＆ルーズ」（仮題）を企画。
長谷部安春監督の提案で横浜の管轄署を舞台にすることになった。
横浜といえば日活出身の長谷部監督には、思い出の地だったのかもしれない。
石原裕次郎主演の「赤いハンカチ」、「夜霧よ今夜も有難う」などムード・アクションの
舞台は港町ヨコハマだったからだ。
とまれ「刑事ワイルド＆ルーズ」にはそれまでの刑事ドラマの通念を
打ち破る要素がもりこまれていた。
主演には当初から舘ひろしと柴田恭兵さらに浅野温子、
「ビーバップ・ハイスクール」でデビューし人気爆発の仲村トオルが想定されており、
そのキャスティングの段階で成功が約束されていたといえるだろう。
舘ひろしはロック・グループ「クールス」のメンバーとして活躍後、
1978年には長谷部安春監督の「皮ジャン反抗族」でバイクと恋に生きる青春像を
好演してナイーブな一面も見せている。
さらに村川透監督の「薔薇の標的」では、
組織にたった一人で立ち向かう一匹狼に扮して壮絶な復讐劇を演じ、
ワイルドな一面も垣間見せた。
ナイーブかつワイルドというアンビバレンツな魅力が俳優・舘ひろしの、
アクション・スターとしての可能性を感じさせて、
「西部警察」では石原軍団の要の一人として、
ハードなアクションをお茶の間で展開させていた。
石原裕次郎、松田優作に続く大型アクション・スターとして成長しつつあった舘ひろしと、
数々のテレビシリーズで＜軽さ＞を身上としたコミカルなアクションで
活躍していた柴田恭兵とのコンビは、終局を迎えつつあった
「太陽にほえろ！」時代にとって変わる新たな刑事ドラマの誕生を
予感させたのではないだろうか。
神奈川県警の所轄署である港署を舞台に、
捜査課の刑事・鷹山敏樹（舘ひろし）と相棒の大下勇次（柴田恭兵）、
その後輩の町田透（仲村トオル）が活躍する刑事ドラマだったが、
ユニークなのは所轄署ゆえに捜査課の隣りに少年課があること。
少年課の課長・松村優子（木の実ナナ）とやたら事件に
首を突っ込む少年課の刑事真山薫（浅野温子）が色を添える。
捜査課の課長にはこれまでの「太陽にほえろ！」の石原裕次郎や
「特捜最前線」の二谷英明といった頼もしいスーパー・ヒーロー的なボスではなく、
県警や本庁に気を遣いながらはみだし刑事たちの尻拭いをするサラリーマン的な課長
近藤卓造（中条静夫）というのが「あぶない刑事」のユニークな点といえるだろう。
いつでも「バカモン！」と部下を怒鳴っている中間管理職
近藤課長の存在は、「あぶない刑事」のある種のリアリズムとなっている。
こうしたベスト・キャスティングを得て、
「あぶない刑事」の視聴率は平均15%を記録し、
最終回に向けて20%を越すほどの勢いを見せて、
１年間51話に及ぶ人気シリーズとなった。
テレビシリーズのカラーを決定づけたのは、脚本の柏原寛司と大川俊道、
長谷部安春と村川透といったメイン監督たちが、
登場人物それぞれのキャラクターを作り上げていった結果といえるだろう。
さらに「大追跡」、「プロハンター」で刑事アクションを
ライトな感覚で色づけした西村潔監督の存在も大きいだろう。

あぶない刑事ついに映画化

番組終了から２ヶ月後の1987年12月12日には、
劇場版第１作「あぶない刑事」が公開される。
「太陽にほえろ！」、「特捜最前線」といったビッグ・ヒット・シリーズでも
映画版が製作されることはなかった。
これまでテレビの刑事モノで映画化されたのは
1963年の「特別機動捜査隊・東京に張り込め」以来のこと。
映画版「あぶない刑事」は長谷部安春監督をはじめ、
テレビシリーズとほぼ同じスタッフとキャストを得て、抜群のチームワークで完成。
テレビシリーズのファンのみならず「あぶない刑事」ファンは映画版によってさらに拡大、
1988年７月２日には第２作「またまたあぶない刑事」が東映洋画系で
夏休みにロードショー公開された。
同年10月にはテレビ第２シリーズである「もっとあぶない刑事」がスタート。
放映枠も日曜午後９時から、日テレ刑事ドラマ黄金枠である金曜夜８時に移行され、
タカ＆ユージの名コンビは再びブラウン管で大暴れしている。
第２シリーズは全25話。うち10本をシリーズの生みの親の一人である
長谷部安春監督が演出して、相変わらずのタカ＆ユージの脱線ぶりが楽しめた。
その「もっとあぶない刑事」が1989年３月31日に終了して約１ヶ月後の４月22日には
映画第３弾「もっともあぶない刑事」が公開されている。

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